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BINGO AID 2025 へようこそ
文 マーク・ルインーソ(成瀬英樹研究家)
音楽が人と人を結びつける力を、もう一度信じてみたい——このプロジェクトは、そんな思いから始まった。
ミュージシャン成瀬英樹が、ファンや応援してくれる人たちと一緒に曲を作る試みを始めてから、もう4年がたつ。あれはコロナ禍のさなか、彼がいくつか仕掛けた実験のひとつだった。
当時、世界は見えない不安に包まれていた。ライブもイベントも次々と中止になり、人が音楽でつながる場は失われつつあった。そんななかで成瀬は、「オンライン」という新しい空間で音楽を分かち合う方法を探しはじめた。
音楽を愛する気持ちがあれば、誰でも曲を作ることができる——成瀬はそう信じていた。俳句を詠むように、もっと気軽に音楽に触れてほしい。音楽は特別な人のものではなく、誰の日常にもある表現なのだ。彼はその単純で力強い事実を伝えたかった。
「僕を応援してくれるみんなは、ほんと勘がいいんだ」と成瀬は笑う。「『また成瀬の思いつきが始まったぞ』って思ったに違いないけどさ。でもね、オンラインサロンを開いて、そこで一緒に作曲を体験するっていうのは、いいアイデアだと思ったんだ」。その声には、遊び心と確信がまじっていた。
最初はファンから「歌詞」を募り、成瀬がそこにメロディをつけた。「詞先って、実はあまりやったことがなかった。でもファンの言葉に曲をつけていくうちに、これが自分には合っているのかもしれないと思うようになった。言葉が先にあるというのは、歌の原点なんだと気づかされたよ。歌はまず言葉から、なんだね」と彼は言う。ファンの言葉が音楽の出発点になり、そのプロセスが成瀬に新しい発見をもたらした。
作曲の途中もすべて、成瀬は生配信した。音が芽吹く瞬間を見守るように、歌が生まれる時間をリアルタイムでメンバーと共有する。メロディが形を持ち、言葉が音になる。その瞬間を共に息をのんで見届け、また次の瞬間には笑い声がこぼれる。音が立ち上がるその生々しい時間を、一緒に体験する。そこには、音楽を「作品」としてだけでなく「時間」として分かち合う、かけがえのない喜びがあった。
やがてチームの名が「BINGO」と決まり、まとまった曲をCDとして出そうという話が出た。「僕、チャリティってまったく抵抗がないんだ」と成瀬は言う。「神戸の震災を経験したからね。チャリティというもののあり方が心に深くしみた体験をいくつもした。だから今度は自分が返す番だと思ったんだ」。成瀬にとってチャリティとは、ただの寄付ではない。音楽が誰かを癒し、支え、希望を届けるという信念のあらわれでもある。
こうしてファンとともに作った曲を通じて、BINGO AIDは音楽による社会的つながりの象徴となり、困難な時代にも人々の心を結び続ける存在となった。音楽が社会にどんな小さな光を届けられるのかを確かめる場にもなった。そこに築かれた信頼と熱意が、BINGO AIDの原動力となっている。
その精神が今も息づいているからこそ、年に1度リリースする「BINGO AID」が生まれた。音楽を通じて社会に貢献しながら、創作の輪を広げていく。その試みはやがて単なる企画を超え、コミュニティの象徴となっていった。その継続の背景には、「音楽を通して人とつながることこそがBINGOの原点である」という確信がある。さらに成瀬の設立した作家事務所「合同会社BINGO」のメンバーも参加するようになり、今年で4枚目のアルバムにまとまった。
「実はね」と成瀬は続ける。「プロの作家をマネージメントしようという発想も、アマチュア作家の育成である『成瀬ゼミ』も、最初はこのファンとの共作から生まれたんだよ」。小さな共同作業は、やがて多くの才能をつなぐ仕組みへと成長していった。
合同会社BINGOは昨年末から好調を保ち、今年は2曲のナンバーワンヒットを含む10曲以上をメジャーリリースした。そこに集う作家たちは年齢も経歴もさまざまだが、音楽への情熱という一点で強く結ばれている。「BINGOにはプロもアマもない。あるのは音楽を愛する気持ちと、人生をよりよくしようとする意志だけ。だからみんな仲間なんだ」と成瀬は言う。
メジャーリリースされた曲のなかには、このBINGO AID出身の作詞家が2人いる。彼女たちはこの輪の中から羽ばたき、自分の言葉で新しい物語を紡いでいる。「僕にインスピレーションをくれた人には、必ず作家クレジットをあげたいと思うんだ。sproutさんは風輪の曲をいくつも書いてくれたし、MIKINAさんなんて最初に出したアイデアが採用されて、風輪のシングル『人生TENKI』がチャート入りした。こういうことがほんとに嬉しい。チャンスって、共有するものだと思うからね」。
その言葉には、成瀬の変わらない姿勢がにじむ。自分ひとりの成功ではなく、誰かと分かち合う成功。それこそがBINGOの理念なのだ。
『BINGO AID 2025』には18曲が収録されている。どれも作り手の心がこもったあたたかい作品だ。ポップス、バラード、ロック、フォーク、ボサノバ、と幅広く、4年間の歩みとBINGOという
チームの成熟が静かに刻まれている。
収益金はすべて日本赤十字社に寄付される。音楽を通して人を思う——その姿勢は、BINGO AIDが始まったあの日から、今も何ひとつ変わっていない。その輪は、今も静かに広がり続けている。
ライナーノーツ(抜粋)
収録楽曲
文
マーク・ルインーソ(成瀬英樹研究家)
1. BINGO AIDのテーマ
作詞・作曲 キソエムジーク
BINGO Songwriting Club初期からのメンバー「キソエムジーク」による、ビートリーな名曲。成瀬本人ではなく、参加メンバーがテーマ曲を書くところが実にBINGOらしい。名うてのポップマニアであるキソエムのジョージ・ハリスンを思わせる佇まいのボーカルと、ソリッドなギターに注目してほしい。「ある日、キソエムが『テーマソングを書いた』と送ってきたんだ。僕はもう一発で気に入ってしまった。この曲は頭から尻尾まであんこがつまったキソエム流ポップ宣言だ。素晴らしいよ!」「キソエムとビートルズバンドを組んだんだ。これから時々遊んでいくよ!」
2. Oh! クワイア
作詞・作曲 成瀬英樹
BINGO初期メンバーの「かねまん」からのリクエストで、今年10周年を迎える「まちだガールズ・クワイア」へのリスペクトソングを成瀬が書き下ろした。町田市を拠点に歌い続ける彼女たちと成瀬とは、楽曲提供やライブ制作でいくつかの縁がある。そしてプロデューサー石田ショーキチ氏、佐々木良氏はもとより、長くこのグループを支えたKさんは成瀬の30年来の旧友でもある。「作ってはみたものの、しばらく放っておいた」と成瀬は言う。「シンプルに見えるかもだけど、ものすごくエモーショナルな歌詞だから、僕が歌うとどうしてもメッセージがダイレクトになりすぎる。迷ってたんだ。そんなある日、AIでアレンジを試行錯誤してみたら面白いバージョンが出来た。まさに、人間の感情とテクノロジーの融合。AIってこうやって使うと楽しいなって思えたね」「この歌を、町ガのみんな、それを支えるスタッフのみんな、そしてファンのみなさんにそっと捧げたい。大好きな『町田』という街にも、ね」
3. 大胆に
作詞・作曲 nelo
成瀬が立ち上げた作曲家事務所「合同会社BINGO」のコンペ採用第1号は、nelo作曲によるNMB48『スワンボート』であった。主にライブシーンで活躍するベテランギタリストneloは、ソングライターとしても一流だったのだ。「neloとは一緒にたくさんの曲を書いた」と成瀬。「風輪さんのシングルに収録された『まごころ』(成瀬と共作曲&編曲)や『ジュテーム・ジュテーム』(編曲)など、メジャーリリースに関わった作品も多いんだよ」「neloのデモって本当に味があってさ。この『大胆に』で聴かせるneloのボーカルも味わい深いんだ。作家本人の歌。これがデモならではの楽しみ方だよね」
4. ひまわり
作詞・作曲 北道 仁
『BINGO Songwriting Club』には3つのコースがある。作曲には参加しないが、生配信や投稿を見ることができる「メンバー」、成瀬自身のブラッシュアップを得て楽曲コンペに挑戦する「成瀬ゼミ」、そしてコンペには参加しないが、成瀬とミーティングの上で楽曲を共作できる「マイソングプラン」だ。北道はこの「マイソング」に今年入会した。この楽曲『ひまわり』自体はなんと30年ほど前の音源の発掘というから驚きだ。若き日の彼の才能が弾けている。「正直、このままプロを目指していたらどうなっていただろうと思うほど素晴らしいよね。北道さんとオンラインで会話してると話がつきないんだ。ビートルズとベースボール、どちらにも造詣が深い方だからね」と成瀬は言う。これからもBINGO内で成瀬とのコラボレーションで新しい作品を聴かせてもらえるのが嬉しいじゃないか!
5. 恋が始まります
作詞・作曲 池上真由
『BINGO Songwriting Club』内「成瀬ゼミ」受講者。この楽曲はコンペ初挑戦曲だが、BINGO内のプロメンバーからもこの個性に絶賛の声が上がった。20代にも関わらず、80年代〜90年代の日本のロック&ポップスをマニアックに聴き漁る池上のバイタリティは、コンペや作曲の新しい時代の体現者となり得る可能性を十分に秘めている。どうか一度その耳で確かめてほしい。彼女の個性的なボーカルもあわせて。「ガミちゃんは、本当に昔の音楽に詳しい。ひとつ好きになると徹底的に追求する子だから、きっと伸びるって思ってる。細かいこと言わずに大きく育ってほしいなって思うんだ」
全17曲収録
にこいち、白井大輔&成瀬英樹、石崎光&成瀬英樹の「新曲」も!!
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